2024年大手ビールメーカー事業方針まとめ
- こぐねえ
- 2024年1月12日
- 読了時間: 10分
2024年も大手ビールメーカー各社から今年の事業方針が発表されました。今回はビール事業を中心に各社の動きをまとめてみます。
アサヒビール
2023年について
ビール類は、前年比103.0%の6,111億円とのこと。
ビールの主力ブランドである「スーパードライ」は、ラグビーワールドカップ2023フランス大会のオフィシャルビールとして試合会場やファンゾーンで提供され、開催国フランスをはじめ世界中のお客さまにブランドを認知してもらう機会となったほか、国際的なビールコンテスト「ブリュッセルビアチャレンジ2023」で、ラガー・インターナショナルスタイルピルスナー部門で最高賞のゴールドメダルを受賞して海外からも高い評価を受けた年となったそうです。
「生ジョッキ缶」は、第2弾としてプレミアムビールの新ブランド「アサヒ食彩」を7月からコンビニエンスストア限定で発売して飲み手に多様な選択肢を提案。2023年10月の酒税法改正によるビール減税が実施された際には、飲み手のライフスタイルの多様化とニーズの変化を捉えた新商品として、アルコール分3.5%のアサヒスーパードライ ドライクリスタル」を発売して、新たな価値の提案に挑戦しました。
さらに「アサヒ生ビール」では250ml缶・中びん・大びんを発売し、ラインアップを強化するとともに“まろやかなうまみ”や“ぬくもりのある世界観”をより多くの人に体験してもらう「日本のみなさん、おつかれ生です。プロジェクト」を開始しています。
発泡酒「アサヒスタイルフリー<生>」や新ジャンル「クリアアサヒ」は、商品・広告・販促を連動させて商品の魅力を訴求し、新規飲用者の獲得と飲用喚起を図ったということです。
2024はどうする?
2026年の酒税改正で酒税が一本化されるビール類では、今後も拡大が見込まれるビールカテゴリーの「スーパードライ」と「アサヒ生ビール」の2つのブランドに引き続き注力する。
2022年のフルリニューアル以降好調な「スーパードライ」は、スタイリッシュな缶体を使用したスマート缶の発売やブランドの魅力を体感できるコンセプトショップを東京・銀座に開設して、若年層を中心としたブランド体験の機会創出に取り組みます。
「アサヒ生ビール」ブランドは「スーパードライ」に次ぐ第2の柱として取り組みを強化。日本全国を巡る「出張マルエフ横丁」や各種サンプリングなどを通じて1,000万人のブランド体験の機会を創出に取り組むそうです。
「生ジョッキ缶」では、第2弾としてコンビニエンスストア限定で展開していた「アサヒ食彩」は販路を拡大し、2024年3月5日から国内の全業態で発売を開始します。
アルコールテイスト飲料では、2023年近畿エリアで先行発売したノンアルコールビールテイスト飲料「アサヒ ゼロ」を2024年4月9日から全国で発売。アサヒビールの強みを生かした新ブランドの本格展開を通して、ポートフォリオの強化に取り組み、アルコールの代替品として「飲めない時に仕方なく選ぶ」存在から、積極的に「飲みたいから選ぶ」商品への育成に取り組む方針を打ち出しています。
発表された前年実績をみると、「スーパードライ」は103.5%と好調。しかし、「アサヒスタイルフリー<生>」や新ジャンル「クリアアサヒ」は100%を割っていて、ビールへの回帰が考えられる結果となっています。
2024年は、ビール類が前年比101.6%を目指しています。しかし、「クリアアサヒ」は前年比88.9%を打ち出していることからビールに注力していくことがみえてきます。
●アサヒビール2024年事業方針
サッポロビール
2023年について
ビール売上は前年比109%となりました。ビールカテゴリーでは、「サッポロ生ビール黒ラベル」が缶・びん・樽それぞれで2022年の年間売上を超える結果となり、10月に発売した新商品「サッポロ生ビール ナナマル」は新市場創造により、オフ・ゼロ系ビール市場の活性化に貢献したということです。
2024年はどうする?
コロナ禍を経て飲み手の消費意欲は高まる一方で、物価高騰を背景に、価値を感じてもらうハードルは今までよりも高くなっていると考えているようです。今は定番回帰の傾向はあって、安心感・信頼感は商品を選択してもらううえで引き続き重要ともあり、そこに新たなアクションも加えることが飲み手の心を動かすポイントになっていると分析しています。
そこでサッポロビールでは、独自の歴史や物語を有する多様なビールブランドと、黒ラベルブランドで培った個性を磨くマーケティングを強みに、未来のビール市場をカイタクする「個性かがやく酒類ブランドカンパニー」を目指すということです。
具体的には、ブランド姿勢の表現と心を動かす体験を通じたビールへの「憧れ」創出と、新しい「お酒」の選択肢提供による新市場創造を打ち出しています。
ビールブランドでみると、「サッポロ生ビール黒ラベル」は、クオリティアップした新しい黒ラベルが楽しめるリアル体験イベント「THE PERFECT 黒ラベル EXPERIENCE 2024」を2024年3月から全国11都市で開催します。また、飲食店における提供品質向上を目的とした施策も展開して、飲み手の心を動かす感動体験の拡大を図るなど、熱狂的なファン化の促進と、若年層を中心としたビール無関心層へのアプローチに取り組んでいきます。
「ヱビスビール」では、ブランド姿勢を表現するため、「たのしんでるから、世界は変えられる。」をテーマに、ブランドアンバサダーに俳優の山田裕貴さんを迎えてコミュニケーションを刷新するとともに、2024年4月にはブランド体験の拠点となる「YEBISU BREWERY TOKYO」を開業します。また、「CREATIVE BREW」の新商品「ヱビス シトラスブラン」を発売するなど、130年を超える歴史を持つヱビスだからこそできる挑戦を通じてビールへの「憧れ」を創出していきます。
発表された前年実績をみると、ビール類は前年比101.6%と好調でした。内訳をみてみると、「サッポロ生ビール黒ラベル」ブランドは前年比111.2%。「ヱビスビール」ブランドは前年比95.2%と明暗が分かれています。特に「ヱビスビール」ブランドはここ数年下がり続けているので「YEBISU BREWERY TOKYO」によって回復できるのか注目です。
発泡酒や新ジャンルでは発泡酒が前年比95.0%。新ジャンルが前年比84.8%となっています。
2024年は、ビール類は前年比99.1%となっていて、「サッポロ生ビール黒ラベル」ブランドは前年比112.6%、「ヱビスビール」ブランドは106.1%、発泡酒(新ジャンル含む)は86.0%を目指しています。
サッポロビールはビールへの回帰が強く表れていますね。この傾向は昨年もあったので、将来的にビールテイスト商品は一般的なものはビールで、健康系などの機能系商品を発泡酒とすみ分けていくのかもしれません。そして、「個性かがやく酒類ブランドカンパニー」と掲げているので、低価格商品はチューハイなどの路線を強めていくのかもしれません。
●サッポロビール2024年事業方針
キリンビール
2023年について
2022年から継続して「ブランドと人財を磨き上げる」をテーマに、「強固なブランド体系の構築」と「新たな成長エンジンの育成」の2つの戦略を軸に取り組みを強化。ビール類計は大びん換算で前年比約94%の1億1,390万箱と言う結果でした。
ビールカテゴリーでは、主力商品の「キリン一番搾り」ブランド、「SPRING VALLEY」ブランドが牽引したということです。
2024年はどうする?
「全員でお客様価値の創造にチャレンジ」をテーマに、「強固なブランド体系の確立」、「新価値を提供する事業・ブランドの着実な成長」を軸とした事業戦略で取り組み、企業価値の最大化を目指す方針です。
強固なブランド体系の確立では、外部環境の変化にしなやかに対応しながら主力ブランドを育成し、各カテゴリーにおいて永く愛され続ける強固なブランド体系を確立すると言います。
「キリン一番搾り」ブランドは、多様なラインアップで様々なおいしさと楽しみ方を提案。また、キリンビールとして17年ぶりにスタンダードビールの新ブランドを発売して、「キリン一番搾り」に次ぐビールブランドとして育成していくとありました。
新価値を提供する事業・ブランドの着実な成長では、「SPRING VALLEY」ブランドおよび直営店「スプリングバレーブルワリー東京」をリニューアルすることで、クラフトビールの楽しみ方を広げ、まだ飲んだことがない方の最初の1杯につなげ、同ブランドからクラフトビールの魅力を多くの方に伝え、共感いただくことを目指すそうです。また、志を同じくする、全国のクラフトブルワリーと共同し、カテゴリーの創造に向けて引き続き取り組みを強化していく方針です。
発表された前年実績をみると、94%と前年を割った結果になってしまいました。ただ、ケース単位での発表なので、どの程度の変化なのかは明確になっていません。2024年はビール類は前年比102.6%の1億1,680万箱を目標に掲げています。
キリンビールは、ビールと発泡酒を分けて発表していないので、細かいことが分かりませんが、発表された内容だけみるとビールへ回帰していく感じを受けます。
「キリン一番搾り」に次ぐブランドを発売して育成していくとありますが、「キリンラガービール」の立ち位置がどうなっていくのかも気になります。こちらも長く続くブランドなので、無くすということはないと思いますが、ファンがどんな評価をするのか注目したいです。
●キリンビール2024年事業方針
サントリービール
2023年について
「ザ・プレミアム・モルツ」や「パーフェクトサントリービール」が伸長したことに加え、新発売した「サントリー生ビール」が当初計画を大きく上回る実績をあげたことでビールカテゴリーは前年比131%となった。
「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドの販売数量は、前年比109%の1433万ケース、2023年4月に新発売した「サントリー生ビール」ブランドは、年間計画の約1.3倍の399万ケースを達成し、「パーフェクトサントリービール」ブランドは、前年比103%の316万ケースとなっています。
新ジャンルの「金麦」ブランドは前年比97%の3289万ケースとなっています。
2024年はどうする?
「サントリー生ビール」のさらなる成長、事業の中核となる「ザ・プレミアム・モルツ」「パーフェクトサントリービール」「金麦」「オールフリー」各ブランドのバリューアップなどにより、新たな飲用需要を創造しビール類総市場の活性化を図ると言います。
2023年に引き続き、今年もビールカテゴリーにマーケティング投資を集中させて活動を強化。また、サントリービールが長年こだわってきた“飲用時品質”向上活動により一層取り組むとともに、飲食店に寄り添った活動を展開して業務用市場の活性化を図るということです。
「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドは、“自分へのごほうびとして一番嬉しいビール”になるべく、日々の生活の中における小さな幸せに寄り添い、ブランド全体でプレミアムブランドとしての価値を提案していくそうです。
「サントリー生ビール」ブランドは、さらなる飛躍を目指して中味・パッケージを刷新。中味は、“グッとくる飲みごたえと飲みやすさ”にさらに磨きをかけ、おいしさを追求したとのこと。パッケージは好評である「生」の訴求を強めるとともに、色調を明るく調整することで、より爽快な印象を強化しています。さらに、多くの人達に楽しんでもらうため、瓶・樽の発売を開始します。
「パーフェクトサントリービール」ブランドは、業務用・家庭用の連携を強化して食事との相性の良さを伝えていくと言います。
「金麦」ブランドは、引き続き季節ごとに味わいをととのえる“四季の金麦”を展開するとともに、「金麦」「金麦〈糖質75%〉」「金麦〈ザ・ラガー〉」の3種で、季節の旬の食材・食事との相性訴求を強化と、年間を通じたマーケティング活動を展開することで“日常的に家で飲むのに一番ふさわしいビール類”を目指すとありました。
発表された前年実績をみると、ビールカテゴリーは好調で、他社と同じく新ジャンルは100%を割っています。サントリービールでもビールへの回帰がみえてきます。
2024年は、「ザ・プレミアム・モルツ」ブランド販売数量は、前年比102%の1460万ケース、「サントリー生ビール」ブランドは、現在のビール2工場からビール4工場すべてでの製造に切り替え、前年比150%の600万ケースとさらなる飛躍を目指します。「パーフェクトサントリービール」ブランドは、前年比117%の370万ケースを目標にかかげています。
新ジャンルの「金麦」ブランドは、前年比96%の3160万ケースを計画しています。
サントリービールも既存のブランド、特にビールを強化する方針ですね。特に「サントリー生ビール」の力の入れ方は凄いと思います。どのくらい伸びるのか楽しみです。
●サントリービール2024年事業方針
2024年は、4社ともにビールにより一層注力していくようです。アサヒビール、サッポロビール、サントリービールは、既存のブランドの強化を明確に打ち出し、キリンビールは新ブランドを育成していくこと方針もありました。また、アサヒビールやサッポロビールはファンをつくる試みとして体験イベントに力を入れていくスタイルでどのくらい販売量が増えるのか注目です。
2026年の酒税法改正に向けて、どんな展開となっていくのでしょうか。
楽しみです。
Comentarios